サクッと確認したかっただけなのに、想定外の防御に阻まれた

データ抽出
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サクッと確認したかっただけなのに、想定外の防御に阻まれた。
退勤間際の廊下で、ちょうど新人とすれ違った。今日中に確認しておきたいことが一つだけあり、これさえ聞ければすぐにでも会社を出られる状態だった。相手は情報という名のカードを一枚握っているはずの相手であり、こちらはそれを最短ルートで引き出す側。時間という有限リソースを考えれば、まさにターン制バトルにおける一手必勝の局面である。ところが、この初期ロット機は、単純な質問一つに対しても過剰な防御反応を示すタイプだった。

自分「あ、〇〇さん、ちょうど良かった。例の件、進んでます?」
新人「あ、はい、あの、大変申し訳ございません、まだ完全には……」
(心の声:想定外の初手。単純なイエスノーのはずが、いきなり謝罪カードで盤面を固められた。)
自分「いや謝らなくて大丈夫です、進捗だけ知りたくて」
新人「はい、あの、六割ほどは、その、進めているつもりでして、申し訳ございません」
(心の声:進捗と謝罪がセットで出てくる仕様らしい。欲しい情報は数字一つなのに、周辺データまで大量に付いてくる。)
自分「そんな謝らなくていいですからね、ほんとに」
新人「はい……すみません、あ、また言ってしまいました」
(心の声:謝罪を止めようとした一言が、新たな謝罪を誘発した。完全な無限ループの気配。)
自分「むしろ丁寧すぎるくらいです」
新人「そう、でしょうか、あの、気をつけます」
自分「六割ですね、了解です。いつ頃終わりそうです?」
新人「あの、明日には、多分、大丈夫だと、思うのですが……もし遅れましたら、本当にすみません」
(心の声:まだ起きてもいない失敗への謝罪。未来のエラーを先回りして自己申告してくる、独特の防御パターンだ。)
自分「大丈夫ですよ、明日で問題ないので」
新人「ありがとうございます、あの、本当にすみません」
(心の声:安心させたつもりが、謝罪ターンがもう一周した。このタイプは肯定を返しても防御態勢を解除しないらしい。)
自分「じゃあ、また明日確認しますね、お疲れ様です」
新人「あ、はい、お疲れ様です、あの、本当にありがとうございます」
(心の声:ちょうどエレベーターの到着音が響いた。外部トリガーによる強制終了。あと一往復続けば、こちらの退勤時刻にまで影響が出るところだった。)
自分「あ、それじゃ」
新人「お疲れ様でした……!」

エレベーターに乗り込みながら、今日のやり取りを振り返る。
データ抽出は本来、最短ルートで必要な情報だけを引き出す効率重視のプロトコルだ。ところが相手が過学習気味の新人だった場合、単純な質問一つに対しても、進捗報告と謝罪がワンセットで返ってくるという仕様に直面する。欲しいのは「六割」という一語だけなのに、そこに付随する詫び言葉の量が、本体である情報よりも重くなってしまう現象は、データ抽出における典型的な非効率パターンといえる。
厄介なのは、こちらが安心させようとフォローを入れるほど、相手はそれを新たな謝罪の起点として処理してしまう点だ。「大丈夫ですよ」という言葉すら、この初期ロット機にとっては「気を遣わせてしまった」という新しいエラーとして再解釈される。防御力が高すぎて、こちらの善意すら跳ね返してしまう、ある意味で完成された鉄壁である。
今日から持ち帰るなら、「この手のタイプへの質問は、最初から謝罪不要と明言してから投げる」という一点に尽きる。「謝らなくていいので、進捗だけ教えてください」と先に条件を提示しておけば、余分なターンを一つ二つは節約できたはずだ。
無事に最終エレベーターへ滑り込めた自律神経、残量にして体感七割。目的の情報は無事に取得できたが、想定より二往復多くコストを払う結果になった。次はもう少し、質問の設計そのものを見直したい。