天気の話のはずが、まさかの精神論に着地した

省電力
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天気の話のはずが、まさかの精神論に着地した。
上司と二人きりで待機ルームに取り残されたとき、真っ先に思い浮かんだのは、いかに低コストでこの時間を凌ぎ切るかという命題だった。相手は精神論とパッションで駆動する高電圧タイプ。下手に踏み込めば長時間の熱弁に巻き込まれるリスクがある。ここは誰のプライベートにも触れず、誰も損をしない、天候というノーリスクな話題で場を持たせることにした。省電力通信、発動である。

上司「いやーそれにしても今日は暑いな!」
自分「ほんとですね」
(心の声:無風の入り。ここは低出力の相槌だけで十分にしのげる範囲だ。)
上司「こう暑いとやる気も削がれるけど、そこを気合いで乗り切るのが大事なんだよな」
自分「そうですね」
(心の声:早くも精神論への布石。まだ様子見でいい。)
上司「電車もさ、この前遅延しててさ、でもそこでイライラするかどうかで、その日一日が変わるんだよ」
自分「なるほど」
(心の声:遅延という制御不能な外部要因に、なぜか自己責任論が接続されている。展開が読めなくなってきた。)
上司「結局さ、天気も電車も自分じゃどうにもできないだろ、だからこそメンタルで差がつくんだよ」
自分「たしかに、そうかもしれないです」
(心の声:軽く同意してしまった。これは長引くサインだ。ループ予兆を検知。)
上司「お前もそういうところ、もっと熱量出していけよ、絶対伸びるから」
自分「頑張ります」
(心の声:具体性ゼロの激励。だが反論するコストの方が高い。ここは全面受諾で流す。)
上司「よし、その意気だ!」
自分「はい」
(心の声:会話の出口が見えない。このままだと本当にスタックが積み上がる。)
上司「まあでも、ほんと今日は暑いよな」
自分「ほんとですね」
(心の声:ちょうどそのタイミングで受付から名前を呼ばれた。外部ノードによる強制終了。精神論ループから生還した。)
上司「あ、呼ばれたな、行くか」
自分「はい、行きましょう」

待機ルームを出ながら、今日のログを振り返る。
天候や交通機関の話題は、本来もっともローリスクな省電力通信の定番ネタのはずだった。誰のプライベートにも触れず、誰の機嫌も損ねない、いわば無害なノイズのつもりで持ち出した話題だ。ところが相手が高電圧型の上司だった場合、この手の外部要因ネタは容易に精神論へと変換されてしまう。天気も電車も制御不能だからこそメンタルで差がつく、という論理展開自体は理解できなくもないが、そこに具体的な出口が存在しないという点が厄介だった。
こうした精神論トークは、明確な結論も終着点もないまま、相手のテンションに比例して延々とループし続ける傾向がある。今日はかなり際どいところまで積み上がったが、受付からの呼び出しという幸運な外部割り込みのおかげで、事なきを得た。
今日から持ち帰るなら、「精神論への相槌は、同意はしても具体的な感想は返さない」という一点に尽きる。「たしかにそうかもしれないです」のような軽い同意は、相手にとって続きを話していい合図になってしまう。ここは「はい」だけで止めておくべきだった。
待機ルームを出た後の自律神経、残量にして体感七割。精神論との相性は、今後も変わらず悪いままだろうと思う。次からは、天気の話題自体を封印するかどうかも検討している。